小説「イニシエーション・ラブ」乾くるみ まんまと二回読まされた男のひとりごと① ※ネタバレ注意

どうもどうもこんにちは(#^^#)

さつきです。

 

こんかいはミステリ好きの友人に勧めてもらった名作「イニシエーション・ラブ」を読んだ感想をお話していこうと思います。

 

もともとミステリは大好きで、僕が初めてミステリと出会ったのは小学校の時、丸坊主時代(中二まで坊主頭でした)の頃でした。「IQ探偵ムー」皆さんきっとどこかで見たことがあること思います。主人公の女の子ムーがなんともミステリアスな雰囲気を纏った美少女で、当時クラスの女の子達の中でよく話題になっていました。「ムーちゃんみたいになりたいよね~!!↑↑」なんて言って盛り上がっていたのを覚えています。僕は僕で「ミステリが読みたい」というより「知的にみんなを導く美少女を見たい」と思って読んでた節があって、小学生なんて大体そんなもんですよね(笑) 単純というか素直というか、その辺は未だに変わっていないので僕もまだまだ子どもってことなんですかね。

余談が続きましたが、ともかく「IQ探偵ムー」かきっかけでミステリが好きになったことは事実なので、僕にとっては思い出の作品です。それから「告白」「高校入試」の湊かなえ先生や、「和菓子のアン」「青空の卵」の坂木司先生を固定で読むようになって今に至ります。

 

今回は友人に勧めてもらった小説を読んでみたわけですが、普段人に勧められたものはあんまり見ないんですよんね。自分の好みは自分が一番わかってますし。

でも例外として特に仲のいい人や仲良くしたい人の好きなものはちょっと無理してでも共有したいと思うのは現金なんでしょうかね(^^;

今日びコロナウイルス君が頑張りすぎてしまって暇な時間が増えてきましたよね。僕もその例にもれず時間を持て余しています。そこで丁度いい機会なので誰かに勧められた本を読むのもいいと思った訳です。

 

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話は戻ってイニシエーション・ラブについて

 

 

この作品は「Jの神話」でデビューを果たしたミステリ作家、乾くるみによるタロットシリーズ「6番・恋人」として書き上げたものだそうです。本の表紙にも右下に小さくタロットの絵がのっていました。本編と関係ないわけないので6番の意味をざっくりまとめておきましょう。

 

正位置

・恋の成就、意中の相手はあなたのもの

・結婚のチャンス

・復縁の成功

あなたの恋は実ります。「裸体」は感情に素直になることを表しており、論理武装をして相手と向き合わなかったりしなければ、関係は良い方向へ進むでしょう。

 

 逆位置

・失恋、保身に走って関係がうまくいかない

・価値観が違いすぎたりしてうまくいかない

・浮気の暗示

相手の気持ちが離れており、繋ぎとめるには自分の態度を変えることが必要になります。また、自分自身に迷いがあり相手に不信感や疑いをもっているのではないですか。決断は時間をかけて冷静さを心掛けてください。

 

こんなところでしょうか。

僕もタロットはよくわかっていないので間違いがあったらごめんなさい。

恋愛関係の芯をつく言葉がいくつかあってドキリとしました(笑)

 

 あらすじ

と言っておきながら好き勝手しゃべるので長くなると思いますがご了承ください。

 

本作はsideAとsideBに分かれており、最後の最後に大どんでん返しが待っているという構成です。最後の謎を解いたその時、物語は全く違う顔を見せてきます。

背表紙に「必ず二回読みたくなる」と紹介されていた通り、僕も二回読ませていただきました。

 

sideA

 本作品の主人公こと「鈴木」は人数合わせで呼ばれた合コンでヒロインのマユと出会います。

代打で参加したソロって女性からしたらなんとなく正規メンバーより信用できそうなのかなって思いましたがどうなんでしょう。

最初は自分に気のありそうな振る舞いを見せるマユに疑念を向けていた鈴木ですが、マユに電話番号を教えられたことがきっかけで彼女に心を開き惹かれていきます。それから二人は合コンのメンバーにはばれないようにこっそりと会うようになり、徐々に異性としてのステップを進めます。たっくん(鈴木夕樹を「たき」と読んだ渾名)、マユちゃん呼びのデレデレっぷりは糖分過多になるかと思いました。付き合い始めてからも二人の想いは変わらず、ラストはクリスマスイブを華やかに彩って幕を閉じます。

 

sideAは基本的に純愛ストーリーが順当に展開していっただけだなぁという印象でした。ほんとうに王道の恋愛小説のようで、ミステリであることを念頭に置いて読んでいる者にとっては逆に警戒心を煽られるパートでした。

 

 ただパートを区切る章のタイトルが80年代のヒット曲で恋を歌った曲だったことから、純粋に恋愛ものも好きだったんだろうな~と思いました。恋愛ものを書くの自体は初めてだったみたいですがね。

ちなみにこれらの曲、先ほど80年代のものだと言いましたが物語の舞台も同様に80年代であることも、遊び心といいますかこだわりといいますか、そういった作品への思いを感じさせてくれます。

全部聴きました。歌詞・メロディーどっちをとっても「木綿のハンカチーフ」が一番好きでした。どの曲も歌詞が物語とリンクしていて聴いていると「この歌詞はマユのことだな」なんて気づきがあって面白いです。タイトルを曲名にするとこんな楽しみも生まれるんですね。

 

 

sideB

sideBは時が巡り「鈴木」が社会人になり地元静岡にマユを残して上京するところから始まります。新しい環境に慣れず悪戦苦闘する鈴木ですが、そこで第二のヒロイン美弥子と出会います。幼児体形で幼い顔立ちのマユとは正反対で抜群のボディラインと知性を感じる綺麗な印象の彼女は、鈴木を気に入り猛アピールします。

なんていうか、田舎の舞台に幼児体形のヒロインが出てきた時点で、都会住みの色気抜群の女が浮気相手になるのはド定番の展開ですよね。

しかし彼女もちの鈴木は美弥子の美貌に揺らぎながらも頑なに一線を引き続け、絶対に落とされない男と絶対に落とす女のホコタテ対決が始まります。さらっと告白されたりもしたのですが、そこはしっかり断ります。しかし彼女がいることは話さなかったあたり都会美女への未練を感じます。この女の上手いところはその後も友達感覚で飲みに誘ったり連れ出したりしちゃうとこなんですよね。同僚としてでいいとか言われちゃうと、相手次第では乗せられちゃいますよ。そんなこんなでだらだら付き合ってる内に、鈴木の中の優先度がマユから美弥子に移り変わっていきます。いやほんとに策士というか、見てる側からすればしてやられたなという気持ちでした。でもまぁ、ストレスに蝕まれ心身ともに弱っている人間には癒しが必要なもので、その役割は田舎にいるマユには難しかったのでしょう。週一で長い距離運転して会いに行くのは肉体的にも金銭的一苦労ですし、単純に都合の悪い女になりかけていたんですかね。気持ちだけでは恋愛はうまくいかないものです。目の前に容姿端麗・頭脳明晰で自分のことを絶対的に好いてくれる都合のいい女がいれば弱っている男は流されるんじゃないでしょうか。それに比例してマユの扱いがぞんざいになっていきます。

決定的にマユを捨てるきっかけをつくったのがマユの妊娠です。後はもうマユと向き合うのがしんどくなってぐちゃぐちゃぽいって具合に捨てちゃいます。

もともと仕事で余裕をなくしていて、マユには結構きつくあたるようになっていたのでそうなるのは当たり前といえば当たり前だったと思います。忙しくしてる人って怖いですよね。心に余裕が無いと「自分には仕事が課せられているんだから多少雑に扱っても悪くないでしょ。」と論理武装して結局散々な扱いになって破局という話はよく聞きます。

 

 

余談ですが、このような余裕の無い大人を批判するお話でミヒャエル・エンデの「モモ」という作品があります。仕事にとらわれ時間と心に余裕を失った大人達が、どれほど恐ろしい人間になってしまうのかを描いたものです。(ミヒャエル・エンデが伝えたいことはその先なのですが省略します)

タスクが多くて余裕がなくなるのは仕方ありません。別にそれを「お前の処理能力が低いのが悪いんだろ。」と正論で殴るつもりもありません。正論の良いところは「正しいこと」ですが、正しいだけの正論に意味はありません。論理的に正しいことに安心したり、正しい自分に酔ったりしたいのであれば別ですがね。その結果恋人や家族にあたるのはいい迷惑です。自分の能力が低いのは仕方ない(向上心はあっていいですが)と受け入れた上で、その上で大事にしたい人間を大事にする方法を模索するほうが賢明だと思っています。能力を磨くのはその後です。

 諸説ありですがね。

 

 

結局鈴木は美弥子のものになり二人は交際を始めます。

物語のラスト、美弥子の実家でお家デートにしゃれこむ二人。両親への挨拶を済まて美弥子の自室へ。親がいる背徳感と緊張感を楽しむ刺激的なペッティング、このあたりも地味めなマユとの対比のように思います。ふと、マユとの思い出をフラッシュバックさせる鈴木、愛着があった相手を捨てたことは鈴木にとってはダメージのあることだったのでしょうね。

その様子を不審に思った美弥子の一言「……何考えてるの、辰也?」

 

辰也って誰やねんという謎を残して、物語は幕を閉じます。

辰也って誰やねん。

 

 

 長くなったので今回は終わりますね。

次回はことの真相から始まります。

ではではまた~(@^^)/~~~